のりおがやってきた

事務所の入り口に、 ひさしぶりに白いブチ猫の「のりお」が現れた。 おでこにちょこんとのった海苔のような模様が、 相変わらず愛らしい。 中へ招き入れたい気持ちは募るが、 無理に抱こうとすると嫌がることはよくわかっている。 急いで専用の四角い茶碗に キャットフードのカリカリと チャオチュールを盛って 入口近くに置いた。 「のりお」は警戒しながらも鼻をひくつかせ、 やがて頭を下げて食べ始めた。 カリカリと小さな音を立ててせっかくだから食べてやろうかという姿が、 なんともいじらしく胸に沁みる。 食べ終わるとこちらを一瞥し、 何事もなかったかのようにプイと外へ出て行った。 触りたいのに触れない距離がもどかしく、 去り際の後ろ姿に切なさを感じた。 それでも、こうして訪ねてくれるだけでうれしい。 いつか「のりお」が自ら一歩、 事務所の中に足を踏み入れてくれる日を願いながら、茶碗を片付けるのである。