朝の挨拶

朝6時になると携帯に電話が鳴 るのが日課となっていた。 電話 の相手は、かつて健康食品会社 を経営し、 九十歳を超えて息子 に事業を譲った人で、 大先輩と 自分勝手に決めた男性である。 野太い声で 「おはようございます。本日もよろしくお願いします。」 というだけの電話であるが、 二年ほど続いた習慣も、ある時ぱたりと止んだ。 ご家族が「ご迷惑ではないか」と心配し、 中止させたのかもしれない。 ところが、私が暑中見舞いをだしたところ、 先輩ご自身から久々に電話があり、 「元気なあなたの声が聞きたくなったよ」 と言われた。 私は思わず 「また朝六時の電話を再開しましょうよ」 というと先輩は大変喜んでくれた。 そして今週から再び朝の電話がかかってくるようになったのである。 したがって朝起きたら携帯を手元に置き、 洗面や体操をしながら 素早く応えられるようにする日課に戻った。 またも野太い声で 「おはようございます。本日もよろしくお願いします。」 から一日が始まるようになったのである。