禁断症状

 

外から帰ってきたスタッフが私の顔を見るなり



「フェンスのむこうに白い猫がいますよ」



とささやいた。



聞きつけた総務の女性が小走りに外に出て行った。



後に続いた私に



「あっ、いた。畠の向こう。ほら、白いねこ」



と指をさす。



見るとお隣の畠の溝に白いねこがいて



溝の底をのぞいている。



頭が身体の割に小さくおなかが大きい。




全身真っ白だが耳の先が薄い茶だ。



表情は分からないが溝の底に何かいるのだろう、



今にも跳びかかろうとしている。



「これはメスだね。もしかしたらおなかに



赤ん坊がいるかもしれない」



しゃべっているうちに見失ってしまった。



「ねこすい」という言葉が流行っているらしい。



「ねこの吸い方」という本があって、



ねこの身体に口を寄せて、



においを嗅いだりキスをするのだそうだ。



そう言われると大輔やフジ夫にごく自然にやっていた。



大輔の場合そうやって鼻の下をかまれ、



5針ぬったことがあるので



まだトラウマが抜けていないが、



口を押さえてなんとか頬にキスをしている。



生くさいにおいがなぜか癖になっているのだ。



一種のフェチなのだろう。



フジ夫は自分からやってきて喉を鳴らしてくれていた。



今は観音様の横で眠っている。







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