大輔なう

確かに大人げないとは思った。 ソファーでゆっくりくつろいでいる 大輔を撫でようとしたらなんと 「ウ ~ 」と唸ったのである。 「今、何と言った?」ハッタと 大輔をにらんだら 大輔もホホをピクつかせて 「きたら、カム」と言った。 かかりつけの獣医の K 先生によると 犬は誰がボスか、自分より偉いのは誰か、 と考えるから、常に強い立場でいることだ、 と言って大輔をぶり投げたことがある。 以来、大輔は K 動物病院に行くと 全身をガタガタ言わせて震えるのだそうだ。 それを思い出して 「なめんな!」と頭をたたいた。 間髪入れず「ガウガウガウ」 と連続で腕にかみついた。 分厚い丹前をちゃんと着ていたから、 痛くもなんともなかったが、 心に負った傷は痛かった。 毎朝の散歩と餌やりは 一体大輔にとってなんなのか。 犬は忠義心の象徴ではなかったのか。 70 歳と 11 歳の絆はこんなにもろいものであったのだ。