チッチだっこ
土曜の夕方、末の娘が

チッチに会いたいと
言うので事務所に連れて行った。
駐車場に入ると、
黒い影がフェンスに沿って
スルスルっと走ってくる。
「チッチ、いたのね。かわいイイイ」
娘が裏声で叫ぶ。
車から降りると先に降りた娘の足元に、
もつれる様に擦り寄っている。
エサを貰えそうなヤツだったら誰でもいいのか。
臆病なくせに、
ここまではパフォマンスできるのだ。
部屋のなかに入って、
エサをいつもの量やって、
「もっとくれ」
と言い寄って来たとき、
それならばと首根っこつかんで抱き上げてみた。
瞬間ふんわりと腕の中に納まったかと思った時、
「それはない!」
とばかりバタつかれて、放してしまった。
しかし、いつもより手ごたえがあったので
娘にシャメルの準備をさせ、
「せーの」で撮って貰ったのがこのスナップである。
ほんの数秒ではあるが
確かに我が胸にいだかれていたのではある。
迷惑だったろうけど。
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