動画キングダム

 昼休みの短い時間が、

まるで異次元の戦場へ通じる抜け道のように思えてくる。

コスモスの冷食をチンする電子音が合図となり、

私は湯気の立つパックを前に動画

『キングダム』の世界へと身を沈める。





パソコンの向こうでは、

砂塵を巻き上げて武将たちが駆け抜け、

剣戟の音が胸の奥まで響く。

漫画と違って動画だからちゃんと音が響く。

みんなに聞こえないようにイヤフォンを耳につけて、

激しい戦の只中に入っていく。

人間同士の闘志のぶつかり合いが息づいているのがたまらない。

やっぱ男は闘うことにロマンを観るのだろうか。

政が大王として立つ戴冠の儀。

その晴れの舞台を狙った反乱の狼煙が上がると、

物語は一気に緊迫の色を帯びる。

信の剣が唸り、昌平君の鋭い眼光が光る。

呂不韋の仕組んだ軍勢は大河のようにうねりながら秦の都咸陽に迫りくる。

戦術も用兵も、漫画でありながらかなり骨太で、

こちらの胸まで熱を帯びる。

気づけば冷食のハンバーグの味も忘れ、

壁時計の針が1時を指す。

だがマウスに指は届かない。

もう少し、この場面だけ――

そんな甘い誘惑に、今日もまた抗えない。

明日の昼休みもきっと、

私は信と政の行く末を追い続けてしまうのだろう。


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