インドネシアの若い人

 先日、急な頼まれごとが舞い込んだ。




インドネシアから来た技能実習生に、

労働法の要点を話してほしいという。

こちらは税や会計の話ならまだしも、

労働法の教習など畑違いである。

「テキストを読めば大丈夫です。通訳もいますから」と、

いとも簡単に言われ、

それでも、年を取ると“まあ、何とかなる”

口ぐせになるから、不安半分で引き受けた。

会場に入って驚いた。

五十人ほどの若者が、

号令一下、すっと立ち上がり、ぴたりと四十五度のお辞儀。

「よろしくお願いします」と声を揃えた。

その目の輝きたるや、

こちらの寝ぼけた心を一瞬で叩き起こすほどだった。

この若者たちは、遠い国から海を越え、家族のため、

自分の未来のため、日本へやって来たのだ。

そう思うと、ただテキストを読むだけでは

済まない気がしてきた。

余計なお世話とは思いながら、

「無駄遣いはしないで、お小遣い帳を付けるんだよ、辛抱してね」と口をついて出た。

いかにも昭和の小言である。

だが、彼らは実に真剣に聞いてくれた。

通訳を介してなお、熱はちゃんと伝わるものらしい。

教えに行ったつもりが、帰るときは、

こちらが背筋を伸ばしていた。

若い人のひたむきさというのは、不思議なものである。

栄養ドリンクより、よほど効く。


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